「国民食」と言われるラーメンだが、インスタントに限れば、「袋入り」は「カップ」に押されて長年、衰退傾向にあった。その袋めんがいま、「歴史的な復活か」(日本即席食品工業協会の任田(とうだ)耕一専務理事)と言われるほどの大ブームになっている。

 衰退を跳ね返すきっかけとなったのは昨年11月、東洋水産が「マルちゃん製麺」を発売し、ヒットしたことにある。

 特許出願中の「生麺うまいまま製法」という新技術によって、めん本来のうまさを損なうことなく、乾燥させることができた。

 通常、袋めんのめんは、こねてのばしためんを切り出して蒸しあげる。その後の乾燥方法で、油で揚げる「フライめん」と熱風で乾燥させる「ノンフライめん」に分かれる。

 これに対して東洋水産は第3の道、切り出しためんをそのまま熱風で乾燥する製法を開発した。

「従来のフライめん、ノンフライめんとは別の新しいジャンルの確立を目指した」(CSR広報部)新商品は試作品が完成するまでに約3年、生産ラインを開発して商品化するまでに約2年、合わせて約5年の歳月をかけて世に送り出された。

 当初、年間の売り上げ目標を1億食としていたが、大ヒットとなったため生産ラインを増強。当初の2倍、2億食に上方修正した目標を、発売からちょうど1年、今年11月にクリアした。

 キーワードは「めん」だ。そもそも袋めんの基本は、めん、スープ(調味料)、具材といわれる。なかでもめんが最も重要な要素だとされるが、これまではスープの進化を追い求める姿勢が目立っていた。

「インスタントのめんを生めんに近づけるのは無理だと、メーカーが無意識のうちに壁をつくっていたのではないか」(業界関係者)

 勝手に築いた「常識」の枠内にとどまっていたわけだ。今回はその壁をぶち壊し、各メーカーがめんの革新を実現したところに袋小路を抜け出す秘訣があった。

週刊朝日 2012年11月30日号