衆院選解散とともに、「違憲ドミノ」の最初の牌がカツンと音を立てて倒れた。12月16日の衆院選、来夏の参院選と、最高裁で「違憲状態」と判断された国政選挙が、抜本的な改革もなされぬまま続くのだ。

「そんな事態は許さん」と爪を研ぐのは、2009年から裁判で「一人一票」を求めてきた弁護士グループの一人、升永英俊さん(70)だ。升永さんらは衆院選投開票日の翌日、全国14の高裁・支部の全60裁判部に選挙無効を求めて提訴する。

「今回は高裁の裁判官180人全員に、『一人一票』を憲法が保障しているかを判断してもらう。違憲で選挙無効の判断も結構出ると思いますよ」(升永さん)

 民主党が政権交代を果たした09年衆院選は、最も有権者の少ない高知3区の1票に対し、最も有権者の多い千葉4区の一票の重みは0.43だった。続く10年参院選は、鳥取選挙区の有権者が1票だったのに、北海道は0.21だった。

 16日の解散直前、国会では衆院の一票の格差を縮める小選挙区の「0増5減」が成立した。だが、区割りの線引きが間に合わず、来月の衆院選は「違憲状態」のまま。同日には衆院選挙区の「4増4減」も成立したが、12年10月の最高裁判決が決めた「都道府県単位の現行制度の抜本的見直し」には踏み込めなかった。

 升永さんは今回の裁判で、スピードにこだわるという。

「公職選挙法は、選挙の効力に関する裁判や当選無効の効果が生じる裁判は、事件受理から100日以内に判決を出さなければならないと定めています。このため、高裁に起こす60の訴訟のうち、100日を過ぎても判決に至らないものが一つでもあれば、国家賠償訴訟を起こします」

週刊朝日 2012年11月30日号