東京高裁に入る小沢一郎氏 (c)朝日新聞社@@写禁
東京高裁に入る小沢一郎氏 (c)朝日新聞社@@写禁

 東京高裁は12日、陸山会事件で強制起訴された「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(70)に対し、“2度目”の無罪を言い渡した。小川正持裁判長は、問題となった政治資金収支報告書の虚偽記載について、一審と同様、小沢氏の共謀と故意を認めなかっただけではなく、“実行犯”とされた元秘書の石川知裕衆院議員(39)らについても、「虚偽記載の故意があったとは認められない」とした。

 ところが、その2日後に開かれた石川氏ら元秘書3人(一審で有罪)の控訴審では、同じ事件がまったく違う様相を見せた。

 同じく102号法廷で開かれた初公判で、飯田喜信裁判長は、無罪を訴える弁護側が取り調べるよう求めた“新証拠”の大部分を「やむをえない事由も必要性もない」などとして却下したのだ。

 石川氏らの虚偽記載を認定した一審判決では、その動機について、胆沢ダム工事発注の見返りに受けた裏ガネの発覚を恐れたため――とした。今回、石川氏らの弁護団は、この核心部分を覆す可能性のある新証拠を提出していた。石川氏と、同じく罪に問われている大久保隆規元秘書の「手帳」である。

 一審が認めたストーリーでは、中堅ゼネコン水谷建設から「裏ガネ」を受け取った当日、本来は大久保氏が行く予定だったが、都合がつかなくなったため、石川氏が代理として向かったことになっている。しかし、両人の「手帳」には、その日の午後7時まで一切の予定が書かれていなかった。

 石川氏の主任弁護人である安田好弘氏が言う。

「石川氏が裏ガネを受け取った事実はありません。手帳を見ればわかるが、当日、大久保氏には石川氏に代理を頼まなければならないような仕事は入っていなかったし、石川氏も頼まれていなかった」

 さらに、石川氏に裏ガネを渡したとする水谷建設元社長の証言に疑問符がつく証拠も見つかったが、これも採用されなかった。

 一連の裁判を傍聴してきたジャーナリストの江川紹子氏は、こう指摘する。

「この証拠の採否を見る限り、『有罪』という結論は一審と変わらないでしょう。高裁は概して事実調べに消極的ですが、土地の本登記の時期をずらす案を石川氏ではなく仲介業者側が提案したとする業者の小沢公判での証人尋問調書など、事件に直結する証拠すら調べないのであれば、いったい何のために控訴審があるのでしょうか」

週刊朝日 2012年11月30日号