衆院解散前のどさくさに紛れ、「次期政権党」に移ろうとした大物議員がいる。与謝野馨氏(74)だ。同氏は自民党で官房長官や財務相などを歴任したものの、政権を失った後の2010年4月に同党を離党。「たちあがれ日本」の結党に参加したが、実績を残す間もなく、翌年1月には菅直人前首相の誘いで再び離党し、経済財政相に就くとともに、無所属のまま民主党会派に入った。

 同氏の事務所は、「与謝野が『除名解除をお願いしたい』とし、(選挙区の)区議団や都議団が『解除願』を都連に出しました」と経緯を説明する。

 区議団や都議団が復党に奔走したのは、同氏がいまも、地元の東京1区(千代田、港、新宿区)で強い影響力を保っているからだ。自民党関係者が明かす。

「今度の自民党の1区の候補者は女性の元官僚ですが、地元の区議も与謝野氏のゴーサインがない限り、本腰を入れて彼女を支援できないんです」

 敗北が許されない花の1区の候補者を“人質”にとられ、地元議員らも協力に走ったというわけだ。

 ところが、その後は思惑どおりに進まなかった。党本部が壁となって立ちはだかったのだ。党本部の関係者が言う。

「党幹部たちは実質、『ノー』の判断で、選挙前の最後の党紀委員会では審査にもかけられませんでした。何でもかんでも復党させたら、党の規律が保てませんよ」

 この関係者によると、自民党はそもそも、除名となった議員の復党を認めた例は少ない。同氏は離党時に谷垣禎一前総裁を徹底的にこき下ろしたため、「政権を奪還できそうになると帰ってきたがる。“権力病”としか言いようがない」(谷垣氏の側近議員)と、党内には強い拒否反応を示す議員も多くいる。

週刊朝日 2012年11月30日号