衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は近著『現実を視よ』(PHP研究所)のなかで、「日本の政治家も、官僚も、三流どころか四流である」と言い切る。これまでは公の場で政治的な発言は避けてきた。経営者にとって政治批判はメリットにならないからだ。しかし、最近は政治に対する思いを明らかにするようにしたと言う。

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 このままでは日本はつぶれるのではないか、という危機感がある。一生懸命仕事をしている人が政府に対して怒らないといけない。

 財界人は怒っています。「政府は規制ばかりで産業を育てようとしていない」と。むしろ、つぶそうとしているように感じています。でも、意見を発する経営者は少ない。とくに金融などの許認可産業であれば、当局に意地悪される可能性があるからです。

 ファーストリテイリングは、どこの団体にも所属していません。許認可産業でもありません。とはいえ、発言することでビジネスのプラスになるわけでもありません。それでもあえて、批判することにしました。もはや時間がないからです。

 財政問題や消費税率の引き上げ、年金問題などおかしいことがたくさんある。

 本当に財政再建を考えているのであれば、まず行政の効率化を進めることが先ではありませんか。国民に負担を押し付けるのではなく、現状の半分程度の費用で行政ができるようにならないものでしょうか。民間企業の報酬が大きく下がっているなか、公務員の給与は引き下げるべきです。

 民間企業はコンピューター化で事務などの効率化を図っています。それに対して、行政はすべて人海戦術。情報システムがこれだけ進んでいるのに、村があって、市があって、県があって、国があるという、二重、三重の行政となっています。

 この国はムダなことばかりにお金を使っている。今後、稼ぐ人や企業がいなくなれば、最悪の国になってしまう。われわれは成長を忘れてはならない。

週刊朝日 2012年11月23日号