2年連続で巨額の赤字に陥るパナソニック。社長自らが「負け組」と評するなど危機意識が充満するなか、創業者である故・松下幸之助氏の教えが再び脚光を浴びている。日本の「ものづくり」の砦は復活できるか。

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 パナソニックは来年3月に新たな中期経営計画を発表する。その根底には創業者で、「経営の神様」と言われた故・松下幸之助氏の理念が息づいているようだ。

 元米国松下電器会長で『松下幸之助は泣いている』(朝日新書)などの著書のある岩谷英昭氏も、幸之助氏の「こけたら立ちなはれ」の精神が必要だとする。

 具体的には、いまをときめく米アップルや韓国サムスン電子から真摯に学ぶことを挙げる。この2社は、EMS(電子機器受託製造サービス)企業や世界トップの流通企業と国境を越えた役割分担(水平分業)の態勢を築いたことで、「日本企業に勝ってきた」(岩谷氏)という。幸之助氏も、「共存共栄ということでなくては、真の発展、繁栄はありえない」と言っていた。

「パナソニックは製造から販売までグループで手がける垂直統合型の経営で成長しましたが、これからはグローバルな共存共栄=水平分業の態勢が、パナソニックが再び栄えることにつながると思います。幸之助さんの最大の財産、人財は残っていると信じます」(同)

 2018年、パナソニックは創業100年を迎える。日本を代表する「ものづくり」企業には「幸之助回帰」で大復活を果たしてほしい。

週刊朝日 2012年11月23日号