都知事選が告示される11月29日まで1カ月を切ったが、有力候補が名乗りを上げる気配が一向にない。盛り上がりに欠ける緒戦でスタートダッシュに成功したのが、石原慎太郎前東京都知事に「後継指名」された猪瀬直樹副知事(65)だ。自民党を筆頭に、「猪瀬獲り」を画策する声が方々から上がり始めた。

「一部の都議は猪瀬さんを毛嫌いしているが、党幹部はすでに乗ることを決めている。あれだけ強ければ仕方ない。あとは理屈付けを考えればいいだけだ」(自民党関係者)

 とはいえ、実際に猪瀬氏に乗るのは、そう簡単な話ではなさそうだ。猪瀬氏を推す石原氏は、いまや「第三極の人」だ。

「石原さんは今後、衆院選で戦う相手になる可能性が高いので、猪瀬さんへの相乗りには慎重論も根強い。猪瀬さんを上回る候補が見つからなければ、誰にも推薦を出さないこともあります」(自民党中堅議員)

 そんな煮え切らない自民党を尻目に、第三極の動きは加速している。石原氏との連携を模索する日本維新の会の橋下徹大阪市長は、石原氏の辞職表明の翌10月26日に「力量はたいへん素晴らしい。都知事にふさわしい方だ」と猪瀬氏支持を表明。それに続いて、「元祖」第三極のみんなの党も、渡辺喜美代表が11月2日の記者会見で、「政治理念や基本政策が、みんなの党とほぼ一致している。応援するという方向性を早急に検討したい」と語った。

 維新幹部は自信たっぷりにこう言う。

「橋下、石原、渡辺の3人がそろって演説すれば、相当なインパクト。それだけで一気に猪瀬さんに流れが向く。自公の応援がなくても勝てるでしょう」

週刊朝日 2012年11月16日号