がんの治療を受けるとき、「病院によって生存率が3割以上違う」と聞けば、生存率の高い病院を選びたくなるのが人情だろう。全国がんセンター協議会は10月22日、がん診療を受けた患者の、病院と部位ごとの5年生存率などを発表した。このデータをどう見れば、「いい病院」を選べるだろうか。

 今回のデータは、全国のがん診療の中核的な役割を担う28病院を対象にしたもの。それでも、がんの5年生存率のトップの病院と最下位で比べると、胃がんで24ポイント、肺がんで33.3ポイントといった大きな差になった。

 だが、この数字だけで病院を選ぶのは、早計である。

 発表されたデータは生存率だけではない。今回発表された「1期/4期比」という数字も重要だ。

 この数字は、最も早期の1期と最も進行した4期のがん患者数の比だ。この数字が大きいほど、「早期患者が多い」ことになる。逆に小さいと、がんが進行した患者を多く診療していることになり、生存率は悪くなりやすい。

 最もわかりやすい結果が出ているのは、胃がんの生存率だ。トップの大阪府立成人病センターの生存率は80.2%で1期/4期比は6.5と高く、早期の患者が多いことがわかる。一方で生存率最下位の茨城県立中央病院は56.2%だが、1期/4期比は1.9と小さい。胃がんは進行の度合いによって、生存率が大きく変化してくるため、強い相関関係が出ている。

 また、全体の傾向として、がん治療に特化する「がんセンター」が上位にランクインする一方、県立病院が下位に低迷しているのがわかる。これは、それぞれの病院が置かれた状況が異なるためだ。

 今回の調査結果をまとめた、千葉県がんセンターがん予防センターの三上春夫部長がこう話す。

「がん治療に特化した病院は早期にがんを発見して、治療できるインフラがしっかりしている。さらに、医療機関同士の連携がうまく機能していると考えられる。一方、県立病院は、重度のがん患者や行き場のない患者を積極的に受け入れているので、どうしても生存率が低くなってしまう。だから、上位グループと下位グループの治療技術の差は小さいだろう」

週刊朝日 2012年11月9日号