いま、日本人の2人に1人ががんになる時代。しかしそもそも、がんの原因はどこにあるのか。「どうしてがんになるのか」というメカニズムをライターの中寺暁子氏が取材した。

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 がんは、ある日突然からだの中にできるわけではありません。多くの場合、そのきっかけは20~30年前までさかのぼります。

 遺伝子は「生命の設計図」といわれるように、からだを作り、それぞれの働きを決めています。この遺伝子の一つが、あるとき何らかの引き金によって傷つくことがあります。そしてその遺伝子を持つ細胞が分裂を繰り返すことで増殖し、やがてがんとなるのです。

 遺伝子に傷がつく引き金となるのは、ウイルスや紫外線、さまざまな発がん物質などです。ただし、引き金となる出来事は、数十年前に起きているので、なぜがんになったのかを特定するのはむずかしいものです。肝炎ウイルスなど引き金を特定できることもありますが、ウイルスを保持していてもがんになる人とならない人がいます。それには遺伝子を取り巻く環境が大きく作用しています。順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座教授の樋野興夫医師はこう話します。

「生きている以上、遺伝子はある確率で傷つきます。大切なのは、それががん化する時期をできるだけ遅らせること。天寿を全うするまでがんでは死なないことが、がん研究の最終的な目標なのです」

 実際にがんの症状が出ないまま、別の理由で亡くなって解剖してから初めてがんだったとわかる高齢者は少なくありません。

週刊朝日 2012年11月9日号