前川清さんは、歌手として活躍する一方で、バラエティ番組「欽ちゃんのドンとやってみよう!」などに出演し人気を博した。しかし慣れないバラエティの仕事でショックを受けたこともあったといい、萩本欽一さんに声をかけられたときのことを振り返る。

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 番組が始まる少し前に突然、「僕とやらない?」と声をかけていただきました。頼まれると断れない性格なので、「おれ、どうかな、お笑いできるかな」と内心では心配なのに、「わかりました」と言う自分がいて。でも、そうやって消極的に引き受けて、結局、よかったなあと思うことがいっぱいあります。お笑いもやってよかった。楽になった。

 最初は、面白いねと言われるとショックだったんです。おれ歌い手だよって。でもあるとき欽ちゃんに「清ちゃん、いま、レコード売れてるの?」と聞かれて「売れてません」と答えると「それでいいんだよ。いま、清ちゃんは笑われてるの。お客さんはそれが見たいから。だったらいまは笑われるのをやればいい」と言われて、それから変わった。笑いの対象になって、おかしいことを前面に出し、「じゃ、歌も聴いてみますか」と、ついでに聞いてもらうくらいがいいと思えるようになったんですね。

週刊朝日 2012年11月2日号