米国から帰国した森口尚史氏には記者が殺到=10月15日、成田空港 (c)朝日新聞社 @@写禁
米国から帰国した森口尚史氏には記者が殺到=10月15日、成田空港 (c)朝日新聞社 @@写禁

 キャスターの辛坊治郎氏は、読売新聞による「世界初、iPS細胞移植」の誤報について、「なぜ誰も報道内容に異議を申し立てなかったのか?」と素朴な疑問を口にする。しかし一方で、自身にも反省する点があるという。

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 反省の弁を一つ。私は現在、関西地区で月曜から金曜まで毎朝、情報番組の進行を担当しているのだが、朝刊各紙の記事を紹介するコーナーが番組の目玉の一つとなっている。

 読売新聞が歴史的大誤報をやらかした朝、1面に掲載されていた「世界初、iPS細胞移植」の見出しを前に、この研究が人類にとって如何(いか)に偉大な業績かを、私は滔々(とうとう)と演説してしまったのだ。

 新聞の「独自スクープ」等について「早朝で取材ができず、番組としては真偽の確認は取れていません」等の言い方で、事実確認のできている一次情報と、「伝聞」に過ぎない二次情報を区別して伝えるところが、他の情報番組の新聞紹介と一味違うという評価を得ていたのだが、今回は「身内」である読売新聞が社説横の解説ページまで使って大報道していたためにすっかり警戒心を解かれてしまい、結果的に大誤報の片棒を担いでしまった。

 私の解説を聞いて、「自分や家族の病気が治る日も近い」と、ぬか喜びされた方もいるはずだ。その皆さんが「誤報」という結果に打ちのめされていることを想像すると、居ても立ってもいられない。

 まさに、慙愧(ざんき)に堪えないとはこのことだ。この場を借りて心からお詫びしたい。

(週刊朝日2012年11月2日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年11月2日号