安倍晋三自民党総裁(58)は9月28日、新役員人事を発表した。側近議員の一人は「やっとここまでこぎ着けた。感無量だ」と声を震わせた。

 元トップが自民党の総裁に再び座るのは、1955年の結党以来初めてのことだ。安倍内閣で官房副長官を務めた下村博文衆院議員(58)によると、安倍氏が再起に向け本格的に始動したのは昨年だった。

「政治評論家の三宅久之さんを中心とする有識者グループや若いネットユーザーらとの会合を通じ、『安倍待望論』が根強いと知ったことが契機でした」

 それでも5年前の「政権放り出し」が尾を引き、本人の踏ん切りはつかない。そうした心境が明らかに変化したのは8月中旬、韓国の李明博大統領が竹島に上陸した時だった。

 周囲は「将来、いつ総裁選に手を挙げても放り出しのことは必ず言われる。それなら今でも同じだ」と出馬を促し、最後は盟友の衛藤晟一参院幹事長代行(65)が「国難の時だからこそ国に命をささげるべきだ」と進言すると、安倍氏は「そう思う」と答えたという。

 当初は「3位で上出来」(安倍陣営の議員)と見られていたが、「本命」石破茂氏(55)を嫌う議員票を吸収して決選投票を制した。

週刊朝日 2012年10月12日号