大動脈瘤は胸部、腹部とも瘤が大きくなるほど破裂のリスクが高まり、その際の死亡率も高い。破裂を未然に防ぐには瘤の早期発見が重要だと、戸田中央総合病院副院長で、日本ステントグラフト実施基準管理委員会の委員長を務める石丸新医師は語る。

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「人間は血管とともに老いる」といわれるように、高齢になるほど血管の壁がもろくなります。大動脈瘤はこうした加齢による要素と、体質が合わさって発症します。

 現在、第一選択になっている治療は、瘤のある血管を人工血管に置き換える「人工血管置換術」です。これは50年前に始まった治療で、長期的にもいい成績が得られています。一方、ステントグラフト内挿術は10年ほど前から始まった比較的新しい治療で、患者さんへの負担が軽いのが特徴です。年齢や持病で手術ができなかった患者さんでも受けられますが、長期成績は出ておらず、瘤の位置によっては治療できないこともあります。

 大動脈瘤は自覚症状がほとんどないため、健康診断やほかの病気でCTを撮ったときに見つかるか、破裂して見つかるかのどちらかです。後者では救急で運ばれても胸部大動脈瘤なら2割、腹部大動脈瘤でも6割しか助からないという、大変厳しい病気です。

 そのため、大切なのは早期発見です。現在、大動脈瘤のための検査はなく、健診などで発見されることがほとんどです。だから、腹部の超音波検査を受けるときは、担当医に「血管も一緒に診てほしい」と依頼してください。一般的な検査では血管まで診ませんが、声をかけることで、注意をはらってくれます。

週刊朝日 2012年10月5日号