財政赤字がここまで悪いのに日本国債の利回りは低位安定している。投資助言会社「フジマキ・ジャパン」代表の藤巻健史氏は、国債が日本人の生活に深く関わっているリスクを「消費税増税に反対する前に考えるべき」と提言する。

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「日本国債の91.7%(3月末時点)は日本人が保有している。少しでも売れば相場が大崩れして、自分で自分の首を絞めることになるから、『国債村』の住人である日本は決して国債を売らない」 
 このような発言は30年間のディーラー人生の中で何度も開いた。そして何度も、「国債村」の住人の売りによってマーケットが崩れてきたのを見てきた。国債マーケットは過去、外国人の売りで大崩れしたのではないのだ。日本国債のディーラーは、まさに過去に学ばない人たちだなと思って感心する。
 これは、個人が「自分は個人国債を持ってないから大丈夫だ」などと軽く考えていい話ではない。日本人はみな、間接的に日本国債を大量保有しているからだ。国債がおかしくなったら、こうなる。
 年金の支払い原資は大量に国債に投資されているから、年金の存続が心配だ。生命保険会社も融資が伸びないせいで大量に日本国債に投資しているから、万が一のときに保険金を払ってくれなくなってしまうかもしれない。銀行も同様に融資の代わりに日本国債を大量に保有している。ゆうちょ銀行など預かった預金の8割をも国債に投資しているのだ。預金を返せなくなる恐れもある。消費税の増税に反対するのなら、そのリスクも考えて欲しい。

※週刊朝日 2012年9月28日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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