原因は微生物? 毎年200ギガトンもの氷がとける北極

 夏でも冬でも、一年中、氷と雪に閉ざされた大地……。そんな北極のイメージが壊れ始めた。夏になると、氷がとけ、あちこちに激しい流れの川ができるのだ。北極に何が起きているのか? 観測チームとともに北緯77度の氷河を歩いた7~8月、グリーンランドは記録的に「暖かい夏」だった。
 氷をザクザク踏みしめ、氷河を登り始めた途端、異様な光景が広がった。赤茶や灰色に汚れている。墨をまいたように黒い氷もある。顕微鏡で見ると、ソーセージみたいに連なる赤茶の物、鮮やかな緑の楕円、赤い丸……奇妙な色や形がいっぱいだ。「微生物です。これが氷をとかすんですよ」と教えてくれたのは国立極地研究所の植竹淳特任研究員。氷は白ければ太陽光の熱を反射するが、色づくほど吸収し、とけやすくなるという。さらに登ると、氷にぽつぽつ穴が開いている。底に水と1~2ミリの茶色の粒々がたまっている。微生物の集合体「クリオコナイト」だ。ヒマラヤや中国の山岳氷河に多いが、「極地、しかも標高の高いところまで広がっているとは」と千葉大の竹内望教授は驚いた。
 グリーンランド氷床は、融解が年々加速している。米航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこの7月、「表面のほぼ全域がとけた」と発表した。衛星観測開始以来初めてだ。
 雪が積もり氷ができ、やがて氷山や水となって海へ流れ落ちて消える……。グリーンランドの氷床は、その増減のバランスが崩れ、毎年200ギガトンもの氷を失い続けている。それに拍車をかけているのがこの雪氷微生物だとすれば、地球環境もまた彼らにコントロールされているのかもしれない。

※週刊朝日 2012年9月28日号
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