〈いじめられていて、死にたい〉などと生徒手帳に書き残し、札幌市の中学1年の男子生徒(12)が自宅マンションから飛び降り自殺したのは9月5日のこと。だがこの事件、周囲に聞いても「いじめ」の存在が浮かんでこないという不可思議な事態となっている。

 悲劇が起きたのは平日の朝。男子生徒は吹奏楽部の練習へ向かおうとマンション3階の自宅を出た直後、7階に上がって共用部分の窓から飛び降りたとみられている。自宅ではいつもどおり朝食を食べ、母親と普段と変わらない様子で会話をしていたという。

 本誌の取材でも、自殺の原因はつかめなかった。同級生が言う。「『いじめ』って急に言われても、なにそれって、全然よくわかんなかった。男子も女子も(男子生徒を)むかつくって思うやつはいないと思う。お葬式でみんな泣いたんだよ」。

 保護者にも担任教諭にもいじめの認識はなく、学校が全校生徒約600人に行ったアンケートでも、いじめがあったという回答はなかったという。市教育委員会は調査検討委員会を設けると決め、遺族は「今後も調査を見守りたい」と話しているというが、謎は深まるばかりだ。

 生徒手帳には、〈もう無理だ〉〈バイバイ〉という言葉や、家族に向けて〈悲しまないでください〉などというメッセージがつづられていた。〈死んだらどうなるか知りたい〉とも書かれていたが、この言葉に同級生たちは首をかしげる。

「みんなびっくりして、いつそんなことを考えてたのかって話題になっていた。そういうことに興味があるようには見えなかったし、そんな話はしたことない。(自殺の理由は)誰にもわかんないんじゃないかな」

※週刊朝日 2012年9月21日号