3.11から1年半が過ぎた。新聞やテレビが伝える福島第一原発(フクイチ)の情報はめっきり減っているが、危機はいまだに続いている。

 対策を講じているとはいえ、国や東電の危機意識の低さには、あきれるほかない。それを象徴する出来事が8月31日にあった。

「万が一の(燃料プールの)火災に備えて、化学物質を用意しているか」

 来日していた米国の原子力技術者、アーニー・ガンダーセン氏は国会内の集会で東電の担当者に質した。4号機の危険性をいち早く訴えてきたガンダーセン氏はこの日、燃料棒が大気にさらされると発火することが実験で明らかになっているが、水素爆発を起こす可能性があるため、水は消火に使えず、代わりの消火剤としては化学物質がある、と指摘していた。

 ところが東電の答えは、「(プール内に)燃えるようなものはないので、火災は想定していない」という信じられないものだった。会場には、「なに馬鹿なこと言ってんの!」「想定外じゃすまないんだよ!」といった怒号が飛び交った。

※週刊朝日 2012年9月21日号