日本随一の歓楽街、東京・六本木のクラブ「フラワー」で起きた凄惨な撲殺事件。目出し帽の犯行グループは夜に消え、事件の真相も闇に埋もれたままだ。錯綜する情報の中で本誌がたどりついたのは、事件を根底から覆す新証言だった。

 現場となったクラブもよく知る事件関係者が言う。

「藤本さんは人違いで殺されてしまった」

 いったいどういうことなのか。関係者は続ける。「藤本亮介(31)さんは店に2、3回しか来たことがない。本当のターゲットが元暴力団員のKだったことは、確かな筋から確認した話だ。しかも殺すつもりはなく、懲らしめる程度の予定だったらしい。Kは、『百年戦争』のように関東連合と長年敵対してきた人物で、つまり襲撃犯は関東連合関係者。犯人はすでに日本にいないとも聞いている。事件翌日の3日には、もう海外へ飛んでしまったようだ」。

 Kと関東連合の確執は、六本木界隈では有名な話で、動機の面では成り立つ。もっとも、この「関東連合犯行説」に対しては、「自分たちのテリトリーであるクラブでは襲わない。呼び出すか、家に行って襲う」(関東連合に近い人間)など手口を疑問視する声もある。

 そして実は、別の「人違い説」も存在する。「フラワー」関係者が"聞いた話"として挙げるのは「山口組による報復説」だ。

 この説を理解するには、昨年末に起きたある事件について触れておく必要がある。昨年12月14日午前3時ごろ、六本木のキャバクラで飲んでいた山口組系の幹部ら4人が、突然店に入ってきた若い男ら約20人にボトルやビール瓶で襲われた。幹部のうち一人は意識不明の重体となり、他の3人も重軽傷。まるで今回のフラワー襲撃を彷彿させる犯行だ。犯人は、事件直前に4人のうちの一人とトラブルを起こした愚連隊のメンバーと推測されているが、いまだ逮捕には至っていない。

 それを踏まえた「報復説」の筋立てはこうだ。藤本さんとフラワーで同席していた人間の中に、この事件の関係者がいて、真の狙いはそちらだったーーというのである。
 いずれにしても、周辺で「人違い説」が真実味を持って語られているのは事実だ。

※週刊朝日 2012年9月21日号