手間なしでおいしいレシピが好評の料理研究家・行正り香氏は、もともと広告代理店勤務。当時は、ランチに行く時間も惜しんで働いていたそうだ。そんなとき、自分の食生活をネガティブに考えるのではなく、ポジティブな気持ちで食べるようにしていたという。

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 コンビニのサンドイッチには、大変お世話になりました。会社に勤めているとき、子どもができる前はランチに行く時間がありましたが、生まれてからというもの、同じ量の仕事を短い時間でこなさねばならなくなり、おにぎりやサンドイッチのお世話になる日々が続きました。「こんな食生活だめだよな」と思いながら店の棚に手を伸ばす人も多いと思いますが、私は、どうせ食べるのなら、「おいしいなあ、よくできているなあ。こんなサンドイッチがどこでも買える日本ってすごいなあ」と思いながら食べるようにしていました。

 というのも私は昔、大手パン屋さんでアルバイトをしていたので、コンビニで袋詰めされて売っている5個150円のロールパンでも、作っている人たちは、きちんと作っていることを知っているからです。

 暑い夏、工場に入って、外に出るころには夕暮れ。パンのおみやげをもらい、蝉の鳴き声を聞きながら帰るときの開放感。私は働くのが好きなんだなと気がついた瞬間でもありました。働かないで自由に生きたいという人もたくさんいますが、労働をして貯まったお金で何かを買う自由や、仕事の合間に見る映画の価値は大きい。どうせ働くなら、いつもポジティブな気持ちで働きたいな、と思います。

 今週のレシピ「かにかま野菜サンド」は本誌で紹介しています。

※週刊朝日 2012年9月14日号