ファッションデザイナーとして活躍するコシノジュンコさんは現在、ミャンマーとの交流に力を入れている。最初に訪れたのは2009年。軍事政権下で初のファッションショーを行った。発展途上国でのショーには苦労が伴うが、初めて北京でショーを開催したときの経験が、コシノさんの支えになっているという。

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 発展途上国でファッションショーを行ったのは、1985年の中国・北京が最初です。中央工芸美術学院のファッション部の講師になってくれないかというお話をいただいたのですが、講師はさすがに無理。そこで、ファッションの世界を知ってもらい、それにかかわるさまざまな仕事があることを紹介するために、ショーを開催したんです。

 当時の中国には、ファッションという概念もなく、すべて一から始めました。こちらからの一方通行ではなく、現地の人を巻き込み、一緒に行うようにしたのが、私たちのこだわり。驚いたのは、準備をしていくうちに、現地の人の目が輝いて、どんどん生き生きとしてくること。自分たちもやればできるんだということがわかり、自信がつくのね。

 これをきっかけに、ベトナムやキューバなど発展途上国でのショーを手がけるようになりました。各国それぞれ事情は異なり、苦労はありますが、最初に北京で、何もないところからショーを作り上げた経験があるから、何があっても動じないですね。

※週刊朝日 2012年9月14日号