発症者の約9割が男性という頭頸部(とうけいぶ)がん。日本頭頸部外科学会理事長で、頭頸部がん専門医の認定にもかかわる杏林大学病院長の甲能直幸医師に、頭頸部がん治療の現状、名医に出会うためのポイントを聞いた。

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 頭頸部がんというのは、頭頸部に見られるがんの総称です。日本では年に1万人が発症します。よく知られているのは舌がん、のどのがんである喉頭(こうとう)がん、咽頭(いんとう)がんですが、それでも多くの人にはなじみが薄いと思います。

 もっとも多い喉頭がんでも年間約3千~4千人(うち9割は男性)足らずです。そのため、胃がんや肺がんのような症例数の多いがんと異なり、標準的な治療を確立するのがむずかしく、治療方針にばらつきが見られます。関係学会では、それぞれの部位に適した治療法を定めようと、取り決めを整備している最中です。

 生活の質にかかわる部位でもあるため、単にがんを取り切ることだけでなく、いかにして機能を残すかに重点が置かれます。疾患やその進行度によって、手術、放射線、抗がん剤、内視鏡治療などのさまざまな治療が用意されています。

 当学会は3年前から頭頸部がん専門医を認定しています。

 当学会のホームページ(http://www.jshns.umin.jp/の頭頸部がん専門医制度の頁)でも医師名を開示していますので、医師選びの参考にしてください。昨今では、消化器科の胃カメラ検査によってのどのがんが発見され、早期に治療へ移行できるケースも増えています。咽頭や喉頭は食道への通り道となりますので、消化器の検査を受ける際には「のどもみてください」と医師に伝えておくことが早期発見へとつながります。

※週刊朝日 2012年9月14日号