野田佳彦総理が8月24日の記者会見で竹島問題に関してこう述べた。1952年、当時の韓国大統領・李承晩(イスンマン)が国際法上違法な軍事境界線を公海上に引いて日本漁船を拿捕(だほ)し、銃撃で漁民の命を奪う暴挙を始めるまで、竹島は一度たりとも韓国の支配に属したことはない、と。戦後70年近くたった今も膠着(こうちゃく)状態にある懸案を最終的に解決する妙案はないのか? ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、日本に「粘り」が必要だと訴える。

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 野田総理の会見もさっそく韓国で「妄言」と扱われているが、国際社会から見れば、一国の総理の公式見解を「妄言」と一蹴する態度には疑問が生まれるだろう。不法な軍事境界線を設定し、自衛権すら確立していない国の漁民に銃口を向けた歴史を知り、水場もない岩を要塞化している不自然な自国の振る舞いを思えば、たとえ少数でも、教科書で教えられた歴史と、国際社会の目線のギャップに気が付く韓国国民も現れるかも知れない。

 さらに、日本がその主張を繰り返し粘り強く訴えることで、やがて「出るところに出て、決着を付けよう」という機運が韓国国内で生まれる可能性もないとは言えない。そうして両国が、国際司法裁判所の判断に運命を委ねる。現実的に、問題の解決にはこの道筋しかないと思う。

 しかしこの手法は、日本にとって両刃の剣だという認識は必要だ。1952年以前に竹島が日本領土であったことに疑いはない。だが、国際司法裁判所が60年に及ぶ韓国の実効支配を重く見る可能性もゼロではない。また、日本は今後、他の領有権問題で他国に提訴される覚悟も要る。

 日本がそれらのリスクを承知の上で、竹島問題について「国際社会に判断を委ねよう」と主張していることを、韓国国民にしっかりと伝えるべきだろう。

※週刊朝日 2012年9月14日号