学校内のトラブルに悩む教師たちのためにつくられた「教職員賠償責任保険」。教職員が損害賠償請求訴訟を提起された際にその諸費用を負担するものだが、訴訟前に法律相談ができる新しい保険をつくった教育評論家の向山洋一氏が教育界の現状をこう話す。

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 学校内のトラブル、上司の不当な扱い、保護者からのクレーム。周囲から助けを得られず、追い詰められる教師がたくさんいます。いじめが起きても、学校や教育委員会が協力してくれず、事態は悪化するだけ。念願の教師になったのに疲弊しきって、現場を去る人もたくさん見てきました。

 そんな教師を救いたいと、私が代表を務める教育研究団体TOSSは2年前、弁護士や保険会社と協力して「TOSS教職員賠償責任保険」をつくりました。

 この保険は、いじめや授業中の事故などで教職員が損害賠償請求訴訟を提起された際の諸費用を負担するのに加え、訴訟に至る前でも弁護士に法律相談できるのが特徴です。実際、訴訟の前の相談が全体の99%を占めています。その点で、「訴訟保険」の性格が強い従来の教員保険や組合共済とは異なります。スタート時の2010年に1874人だった加入者は、今年7月時点で2357人と着実に増えています。

 現場からは、法律相談の依頼が頻繁に届きます。ある小学校で、ケンカをした児童を教師が指導したケース。きちんと座るよう、いすの向きを直すと、勢い余って児童がいすから落ちた。その後、保護者から「子どもがずっと痛がっている」と、毎晩2時間以上にわたる苦情電話が続き、ついには児童の家に呼ばれ、「ケガをさせたのだから先生が個人的に治療費100万円を支払え」と言われたそうです。

 信じられないことですが、現場の教師がこうしたトラブルで悩んでいながら、上司や同僚から手を差し伸べてもらえず、校内で孤立することがままあります。とにかく面倒は避けようとする。そんな学校や教育委員会が実際にあるのです。

※週刊朝日 2012年9月7日号