骨盤内の臓器が膣(ちつ)から出てしまう骨盤臓器脱。治療法として、欧米で普及している、メッシュを使って骨盤底の筋肉や靭帯を補強するTVM手術などを導入する病院が増えてきたという。骨盤臓器脱のTVM手術を日本に導入した、TVM研究会副代表で梅田ガーデンシティ女性クリニック・ウロギネセンター長の竹山政美医師に、病院の選び方などを聞いた。

*  *  *

 11年7月、米食品医薬品局(FDA)が「POP(骨盤臓器脱)の経膣的メッシュ手術に関連する深刻な合併症についての最新情報」とする警告を出しました。尿失禁と骨盤臓器脱のメッシュ手術が対象です。米国ではメッシュ手術の道具をそろえたキットが多種類販売され、どの医師でも手術ができるうえ、品質の悪い道具もあることから、深刻な合併症につながりました。警告後は、訴訟を恐れて手術そのものが減りました。

 日本ではキットが認可されず、安易に手術に取り組む医師が少ないため、合併症も少ないと推測できましたが、実態がわからなかったため、今年初めて医療機関に調査を実施しました。

 調査はTVM手術に関心を持つ施設で構成する「TVM研究会」(全国238施設が所属)が自主的に実施したものです。回答があった162施設中、TVM手術は134施設で実施されており、年間約4400例の手術報告がありました。このうち、合併症は4%にみられましたが、重篤な例はほとんどなく、日本でのTVM手術は米国より安全に実施されていることがわかりました。

 病院を選ぶ基準としては、どの療法であれ、患者さんにそれぞれの利点・欠点を説明してくれ、治療成績などの情報提供があるか、術後のフォローアップが5年以上あるかなどが挙げられます。TVM手術なら累計50例以上の手術経験がある医師がいいでしょう。

※週刊朝日 2012年9月7日号