次々に明らかになる、各地のいじめ問題に対する不適切な対応。これには失望するばかりだが、教育の現場を知る専門家たちも日本教育のあり方に疑問を抱いている。なかでも教育評論家の「尾木ママ」こと、尾木直樹氏は教育委員会を教育における「がん」だと言う。

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 大津市の中学2年生がいじめにより自殺した問題で、市の第三者調査委員会に入ることになりました。これまでの経緯からもわかるとおり、教育委員会は日本の教育における「がん」になっています。全校生徒アンケートで「少年が自殺の練習をさせられていた」などと回答があったのに公表しないなんて、心ある教育関係者のすることではないと思います。

 少し前になりますが、2008年に49区市町村の教員に向けて「教育委員会に関するアンケート調査」を実施しました(有効回答644件)。「現在の教育委員会に満足していますか」との質問に、「とても満足している」と答えた人はたったの1.6%でした。「まあ満足している」が12.4%、「あまり満足していない」は47.4%。「全く満足していない」は28.5%にのぼりました。

 不満を感じる点で最も多かったのは、「現場の願いや実態を把握していない」(78.3%)。以下、「現場に調査や報告を要求しすぎ」(64.3%)、「指示・命令的文書や態度が目立つ」(56.8%)と続き、教委の権威主義的な対応ぶりが伝わってきました。ある教員の自由回答にはこうありました。

〈教育委員会にも管理職にも全く主体性がなく、文部科学省の完全な下請け機関に成り下がっており、上意下達を徹底することが職務であると錯覚して平然としていることが恐ろしい〉

 教育委員会は人事権を握っているので、先生も腰が低くなっていました。教委が学校を視察に来るときの空気は異常ですよ。学校中をピカピカに掃除し、会議室の上座に事務方の誰が座るかを事前に綿密に話し合います。教委の中にも序列がありますからね。靴箱には書道の上手な教員が毛筆で「○○指導主事先生」などと示し、失礼にあたらないようにします。教委の人間も、それが当然という態度です。おかしいと思いませんか?

※週刊朝日 2012年9月7日号