いつまでも元気で若々しくいたいというのは、万人の思いではないだろうか。100歳まで寝たきりにならない体作り・筋力作りを提唱する医師・周東(しゅうとう)寛氏は、若いときからの運動経験がのちの健康維持に大きく関わるとし、次のように指摘する。

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 適度な運動が健康にいいというのはよく知られていますが、実際にこんな調査報告もあります。大学のスポーツクラブ出身でその後も何かの運動を続けている人のグループと、運動をほとんどしてこなかった人のグループを比べると、スポーツを続けているグループのほうが圧倒的に長寿だとわかりました。

 なぜ運動が健康維持と長生きに役立つのでしょう。肥満の予防や解消になったり、肺が強くなったり筋肉を強くしたり、そこにはいくつかの理由があります。

 中でも私が強調したいのが、運動によって「サイクリックAMP」という物質が増えること。この物質が増えると、細胞が活性化して新陳代謝が高まり、血管のごみを掃除して血液をキレイにします。つまり体を若返らせてくれるのです。

 しかも毎日の運動で、すべての細胞膜にブドウ糖を通すトランスポーター(輸送口)が活発になり、酸素を体に取り込むレセプター(取り込み口)も増える。レセプターが増えればブドウ糖を分解しやすくなるので、ミトコンドリアでエネルギーが作られてサイクリックAMPを増やすという、よいサイクルが生まれます。

 50代に入ると筋肉量がガクッと落ちる時期があり、そこに中年太りが重なると体を動かすのが億劫になることもあるでしょう。でも何もしないと老化が進み、億劫→老化→億劫の負のサイクルに陥ります。

 中高年期には激しい運動は必要ありません。室内で短時間にできる、「軽い運動」で十分。軽くても続けることで見違えるほど筋肉がつき、60代で細マッチョも夢ではありませんよ。

※週刊朝日 2012年9月7日号