日本と中国の主張が激しく対立する尖閣諸島。香港の活動家らによる上陸に続き、今度は日本人がその島に立った。「(島に)上陸しない」という条件で地元漁協や海上保安庁と申し合わせて実現した、保守系の政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」(田母神俊雄会長)が主催するツアーの参加者だった。

 この1年あまりで10回もの航海を実施し、尖閣諸島の周辺で漁業活動をすることで、日本の領土としての実効支配を確実なものにしていく、というのがその趣旨。政治家も一般人も「漁師見習」という立場で乗船することで"合法的"に尖閣に行くことを可能にしていたが、参加者が上陸したことで、ツアーの存続が危ぶまれているという。今回、このツアーに同行したノンフィクションライター・西牟田靖氏が当日の様子を振り返りながら、こう指摘する。

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 釣ったばかりの新鮮なガーラの刺し身に乗客全員で舌鼓を打ち、午前9時ごろに船が灯台前に戻ると、私は目を疑った。灯台やその周りに日の丸が四つあるのだ。新たに三つ増えているではないか。カメラの望遠レンズ越しに覗くと、灯台前に7~8人の人影がある。上陸しないのが航海の条件じゃなかったのか。訳がわからない。

 岸から約100メートルと遠い。船長に接近をお願いするが、にべもなく拒否された。「写真撮りに来たんじゃなくて釣りに来たんでしょ」。主催者が上陸したことに怒り、私たちの上陸を警戒しているようであった。

 今回の「上陸」という行為は結局、周辺領海の漁業活動を続けることで尖閣の実効支配を強めようという当初の目的を今後、難しくしたのかもしれない。これまで協力してきた地元の人たちの中には、態度を硬化させている者がいたのだ。

 新川漁港から参加した14隻が所属する八重山漁協幹部の見解は手厳しかった。「上陸しないという前提があったからこそ、これまで漁業者を参加させていた。上陸はルール違反。こういう形で漁業者を巻き込んでくれるな。今後、たぶん協力しないでしょう」

※週刊朝日 2012年9月7日号