日本人にとってワインが身近なものになって久しいが、それはこの人の活躍なくしては、もたらされなかっただろう。1995年、日本人として初めての世界最優秀ソムリエの栄誉を勝ち取った田崎真也さんだ。彼はその称号を生かして何かできないかと考え、出した答えは、日本の風土に根付くワイン文化をつくるということだった。田崎さんはこう話す。

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 優勝したことで、フランスでも、「いま、日本ではどんなワインが好まれているの?」「このワインは日本食に合う?」といった日本や日本食に対する質問を受けることが多くなりました。それに答えながら、ワインといえばフランス発信という時代は終わったなと感じました。これからは、日本ならではのワイン文化をつくっていく時代だと考えたのです。

 そこで始めたのが、お新香と一緒にワインを楽しもうという提案。また、肉料理には赤、魚料理には白といったワインの固定観念を崩そうとしました。日本人がもっと気軽にワインに親しめるよう、居酒屋でメザシをかじる人に赤ワインをすすめるようなソムリエになろうと思ったんです。

※週刊朝日 2012年8月31日号