スペイン北部のバスク地方には、140年以上前から女人禁制の美食倶楽部がある。いったい、どんな倶楽部なのか?

 基本的に女人禁制。今では家族を招ける倶楽部も増えたが、それでも"女子厨房に入るべからず"のところが多い。美食倶楽部と呼ばれるが、グルメが唸りながら料理を評する会ではない。地元の男たちが共同で場所を借り、料理を作って食べる会である。

 いったい、どのように成り立っているのか。今回訪ねたガステルビデは、会員数約250人。年齢層は20代前半から80代までと幅広い。入会金800ユーロ、年会費150ユーロで終身会員となり、いつでも施設を使用できるという。会員になるには、親の権利を譲り受けるか、会員2人以上の推薦が必要だ。信頼関係を重視しているため、推薦を受けると1カ月間名前が告知され、その間に会員から異議が出されると入会が却下される。現在は70人のウエイティングリストがあるという。

 なぜバスク地方では男だけの倶楽部が発展したのか。

「バスク地方はもともと女系社会。家を仕切るのは女だったから、妻からの"避難所"として、時々、男だけが集まって羽を伸ばす必要があったんですよ(笑い)」

 と、ある会員は話す。"避難所"ゆえ、喧嘩はない。飲んだ後は、たいてい歌って踊って終わる。少年のような彼らの顔を見ていると、この街は、まるでおじさんたちの理想郷に見えてくる。

※週刊朝日 2012年8月31日号