日本経済の長期停滞への「処方箋」として、経済評論家の山崎元氏は斬新な二つの方法を提起する。

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 状況を打開するために、二つの処方箋があります。一つめは、「正社員解雇の自由化と解雇ルールの明確化」です。個人がもっと解き放たれて、能力を発揮できる環境をつくる。いまは、身分保護されている正社員と、非正規雇用の二極化が著しいですが、企業はもっと自由な雇用の形を必要としているし、多様な雇用の形があっていい。自分の能力を生かせないのに会社にしがみついてしまうのは、当面の貸金や退職金、企業年金といった、「正社員」という立場を手放すことの「機会費用」が大き過ぎるからです。

 解雇の自由化にあたっては、金銭補償のルールを明確にすること。日本は終身雇用といわれますが、現実には、中小企業では社長がクビだといえば、何の条件もなく解雇されていることも多い。それを失業保険が少々補っているという状況です。そこで、たとえば、勤続5年以内の社員の解雇の際は3カ月分の給料を払う、といった明確なルールをつくるんです。企業は無駄な人材を抱え込まなくていいし、リストラ費用も見積もれる。社員側も、再スタートするための資金が得られます。

 同時に、リスクの受け皿が必要です。解雇イコール路頭に迷う、では困ります。そこで、処方箋のその2は、「セーフティーネットの見直し」です。私は、年金と雇用保険、生活保護を全部統合し、国民全員に無条件に一律の現金を給付する「ベーシックインカム」を提案します。

 国民全員に、たとえば月額5万円を配る。所得に関わらず、だれであっても最低限、生涯にわたって保障されるようにする。4人家族であれば月額20万円です。失業によるプレッシャーはかなり軽減されるでしょう。

 財源をどうするか。1人5万円を全国民に給付すると、年間に必要な財源は約75兆円。いま社会保障の支出は九十数兆円ほどです。うち30兆円くらいが健康保険など医療関係の支出で、残り六十数兆円は、生活保護や雇用保険、年金の給付などです。後者が、このベーシックインカムに置き換えられるので、追加財源は15兆円程度で実施可能な計算になります。

※週刊朝日 2012年8月17・24日号