福島第一原発で事故当時から陣頭指揮を執っていた吉田昌郎前所長(57)が、今度は「脳出血」で倒れたという衝撃のニュースは、7月30日、東京電力の発表によって明らかにされた。

 彼の下で仕事をしていた東電幹部社員が言う。

「吉田さんは所長のときから、本店と違って、もっと情報公開をすべきだと言い続けていた。調査結果はもちろん、事故直後に録画していた社内テレビ会議のビデオ公開も重視していて、『早くきちんとすべてを公開する。それが事故原因の究明につながる』と話していた」

 それほどまでに彼が注視していたテレビ会議の録画ビデオは、8月6日、マスコミに公開された。

 これまで東電は「社員のプライバシー」などを理由に公開を拒み、公開を決めた後も視聴期間を限定したため、全体で約150時間(昨年3月11日午後6時半縲鰀16日午前0時)あるビデオのうちの実質30時間程度しか見られない状態だった。

 枝野幸男経済産業相が"苦言"を呈して、ようやくマスコミへの公開期間が1カ月間に延長されたが、それでも映像や音声の一部を加工し、見ている間の録音・録画を禁止するなど、かなりの制限を加えている。いまもって、キチンと情報公開をする姿勢がないのだ。

 ビデオの一部を見た先の幹部社員が言う。

「吉田さんが『大変だ!』と絶叫したり、爆発で免震重要棟に大音響が響き、騒然としたなかで皆が走り回るシーンもあり、すごい迫力。事故を検証するのに重要です」

 吉田前所長の病床の想いは、東電に届くのか―。

※週刊朝日 2012年8月17・24日号