全員を有期雇用にして、定年は40歳に引き下げる。政府の国家戦略会議分科会が、こんな雇用モデルを打ち出した。「希望と誇りある日本」を取り戻すための将来像というのだが、非情なリストラ社会を招くだけではないのか。分科会の委員で発案者の柳川範之・東大大学院教授(49)に、真意を聞いた。

「定年制を廃し、有期の雇用契約を通じた労働移転の円滑化をはかる(中略)。場合によっては、40歳定年制や50歳定年制を採用する企業があらわれてもいい」

 7月6日に報告書が公表されると、ネットを中心に「40歳で放り出されたら生きていけない」「安心して子どもも作れない」と、批判的な意見が相次いだ。

「反論が来ることは予想していました。そういう意味では、確信犯的にややラジカルな言葉を使いました。野田総理からも『やんちゃな議論をしてくれ』と言われていましたしね。しかし、このまま手を打たないと、いずれは大企業でもバタバタと潰れる時代が来ると思いますよ。経済学者としては、そうなる前に手を打たなければならないと思っています。」と柳川氏。

 さらに、「イメージしたのは、定年=リタイアではありません。20年や25年といった長期の有期雇用契約を認めて、20~40歳、40~60歳、60~75歳と何度かリセットして働き続けていくのです。まずは40歳で一度区切りをつけて、『いまの会社には合わない』『自分の能力が足りない』と思う人は退職し、大学などで学び直して新たな仕事に就いてもらう」と柳川氏は語っている。

※週刊朝日 2012年8月10日号