全国の中学生はいま、山で海で、家や塾の部屋で、夏休みを満喫していることだろう。だが、ここだけは違う。いじめ問題は全国に飛び火し、収まる様子はない。その着火点となった大津市の一角は依然、異様な空気に包まれている。

 市立中学の2年男子生徒が自殺して9カ月。自殺後初めて迎える夏休みは、これまでとは様変わりしている。

 無理もない。ついに、生徒たちに対する警察の事情聴取が始まったのだ。対象者の規模は約300人と大がかりだ。

 被害生徒と当時同級生の保護者はこう話す。

「手紙は警察からではなく、学校から来ました。日時や場所の指定は特になく、保護者同席も可能だという内容でした。子どもたちは動揺しています。警察から話を聞かれるのは初めてなので、何を聞かれるのか、私も心配しています」
 
 同校の生徒たちはこれまでも、多くの報道陣の質問に答えてきた。だが、警察の調べに対する発言は内容次第で、いじめをしていた生徒の刑事処分の可否に影響しかねない。報道陣に応対するのと比べ、心理的重圧は相当大きいはずだ。

 そんななか、事情聴取の範囲が広がるにつれ、地元では、気になる噂も広がり始めている。

 自殺した生徒の家族と親しい男性はこう話す。

「いじめ以外にも原因はあったんじゃないか。自殺した生徒の家族は1男2女の4人家族ですが、当時は全員では暮らしていなかった。学校でいじめられて、家でもさびしい思いをしていたとしたら、被害生徒は居場所がなかったんじゃないかと思いますね」

※週刊朝日 2012年8月10日号