週刊朝日は手術数という客観的な指標を病院選びの一つの目安として提供しようと、10年前から「手術数でわかる いい病院」という企画を続けている。

 手術の難易度が高いとされる食道がん手術の症例数で近畿1位となったのは大阪市立大学病院。消化器外科教授の大杉治司(はるし)医師は、食道がん手術に内視鏡を用いた鏡視下(きょうしか)手術(胸部の場合「胸腔鏡」ともいう)を導入した先駆者だ。胸部、腹部、頸部(けいぶ)を大きく切開する従来の開腹手術に比べ、鏡視下手術は内視鏡や器具を入れる穴を開けるだけで傷口が小さく、からだへの負担も少なくてすむ。痛みが軽くなるため、呼吸機能の回復も早まるという。

「患者さんの多くは、通える範囲に住んでいる人たちですが、なかにはインターネットなどで調べて遠方から来る患者さんもいます。『鏡視下手術を受けたい』と言って来るのですが、第一目的は『安全に治療すること』です。それを慎重に判断したうえで、可能であれば鏡視下手術を検討しています」(大杉医師)

 実際、同院の手術数91例のうち、内視鏡を使用した手術は54例だ。大杉医師は、食道がんはほかのがんに比べ、医療機関によって手術の安全性にばらつきが大きい、と説明する。

「手術を一定数実施している医療機関のほうが安全性が高いという報告も出ています。日本食道学会では、食道外科専門医の認定を進め、今年から、外科手術が5年間50例以上などの基準を満たす施設の認定を始めています。食道がん手術は、今後、専門医のいる認定施設に集約化されていくことになるでしょう」(同)

※週刊朝日 2012年8月10日号