大武健一郎元国税庁長官の妻が、夫の現役時代の脱税、憤報漏洩、愛人との"脱法重婚"など数々の疑惑を週刊朝日に告発した記事の余波で、政界に激震が走っている。

「税と社会保障の一体改革」と「国民総背番号制」の提唱者で大物官僚だった大武氏は自民党の故・渡辺美智雄元大蔵大臣、塩川正十郎元財務大臣、古賀誠衆院議員、仙谷由人・民主党政調会長代行、菅直人前首相、公明党の太田昭宏前代表ら幅広い人脈を誇った。

 それだけに政権与党へ与えた打撃は大きかった。

「大武さんは財務省時代からベトナムと太いパイプがあり、ベトナム国税庁顧問にも就任。ベトナムへ原発輸出をごり押しする仙谷さんの知恵袋的な存在で、勉強会にもよく講師として招かれていた。週刊朝日の発売後、ベトナム関連の会合に大武さんは仙谷さんと一緒に出席していたと聞いたが、スキャンダルは仙谷さんにとって大きな誤算だったようです」 (政府関係者)

「消費税増税はマニフェスト違反」と小沢グループが造反し、新党を結成したこともあり、民主党は目下、新しいマニフェストづくりに取り組んでいるのだが、実は"大武スキャンダル"はマニフェストにも少なからず影響があったのだ。民主党幹部がこう言う。

「民主党のマニフェストの中の『税と社会保障の一体改革』『税制改正』などの項目については大武氏が前からアドバイザーを務めていた。彼は東日本大震災復興構想会議検討部会の委員も務め、復興財源、臨時増税などの提言も積極的に行っていました。記事の影響で今は大武氏から助言が得にくくなりました」

 民主党や財務省内部のゴタゴタは勝手にやってもらえばいい。だが、増税なんて痛くもかゆくもない「高給取り財務官僚」たちによる、「消費増税」という"三文芝居"に付き合わされる私たち国民は、いい迷惑である。

※週刊朝日 2012年8月3日号