上場企業で年1億円以上の役員の報酬を"丸裸"にする、開示制度が3年目を迎えた。5月に亡くなったカシオ計算機の名誉会長を務めた樫尾俊雄氏の13億円を筆頭に、億単位の高額報酬をもらう面々が公になったが、果たしてその額は妥当なものなのか。

 報酬の妥当性を考える物差しの一つとして、役員と従業員の年収の格差を「従業員給与との格差ランキング」で表してみたところ、トップはフジプレアム(兵庫県姫路市)。松本實藏会長の報酬が8億5000万円に対し、従業員の年収が356.4万円で、格差が200倍以上になった。その他ランキング上位7位までが100倍以上となった。上位10社のうち、日産自動車とセガサミーホールディングスを除く8社では、高額な慰労金による影響が大きい。

 前回のトップは日産(143倍)で100倍以上が上位の4社だけ。前回よりも格差は広がったといえる。

 日産の社員はゴーン氏の報酬をどう思っているのか。

「ゴーンさんがいたから、リーマン・ショックからいち早く立ち直った。悪く言う人はいませんよ。だけど、どうやって報酬を決めているのか、算出の方法を社員は知らないんです。業績が悪くなったら、批判が出るかも」(中堅社員)

 実は、業績連動型が増えているとはいえ、役員報酬の詳細な算出式を開示している企業は少ないようだ。金融機関をはじめ投資が業務となっている会社に聞くと、コマツや資生堂、東京エレクトロンなどは財務省に提出する情報開示資料「有価証券報告書」に掲載しており、評判は高い。

「いくら業績を伸ばしている経営者といえども、一定の算出の根拠が開示されない限り、投資家や従業員の信頼は得にくいのではないか」(エコノミスト)

 信頼がないと、格差批判が高まりかねない。

※週刊朝日 2012年7月27日号