お笑いタレント河本準一さんの母親など、芸能人の親族が生活保護を受給していた問題が波紋を広げている。「公助から自助へ」を訴える自民党だけでなく、政府や民主党も、親族の扶養義務強化などを検討している。見直しは本当に必要なのか。参院議員の片山さつき氏とジャーナリストの安田浩一氏が、徹底的に"闘論"。片山氏は、「河本問題」は多くの日本人に衝撃を与える事件だったと強調した。

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安田:片山さんをはじめ、自民党は「生活保護の受給者は窓口での自己負担がなく、モラルハザードや過剰診療が起きているので、医療扶助を大幅に削減すべきだ」とも言っていますよね。ほんとうにモラルハザードって起きているんですか? 現場や受給者の声を開くなど実態調査はされたんですか?

片山:ケースワーカーや地方議員からも話を開いてますし、いちばん身近なのは医者ですが、受診する生保の人たちの身なりや生活ぶりは、決して困窮していないと言ってますよ。

安田:誰もが分かりやすく困窮状態であることを示さない限り、受給できないというのでしょうか。だとすれば、そちらのほうがおかしいという気がしますが。

片山:じゃ、見に行けば?

安田:見に行ってますよ。取材してますから。

片山:私は大阪の西成で、65人の居住者のうち64人が受給者だというマンションを見てきましたが、一部屋が4畳半か6畳一間とかだよ。私が1982年に大蔵省に入省したときの寮なんて、それより狭かった。

安田:そのことを生保の受給者と同列に語るのはおかしいですよ。

片山:でも、私は自力で大蔵省に入りましたよ。問題は、自力で頑張った人と頑張らなかった人に差がつかなかったら、誰も頑張らない、ってことなんです。

安田:衣食住に事欠くまで貧困に陥らないと、福祉の救済が受けられないとすれば......。

片山:聞いてくださいよ! 河本問題がこれほど大きくなったもう一つの理由は、日本のモラルはここまでダメになったのかという衝撃ですよ。子どもにゆとりがあっても、親は子どもに面倒をみてもらえないんだと。さすがに、親きょうだいの扶養義務を定める民法877条を廃止しよう、っていうのは日本では共産党でも言ってないんじゃないの。

※週刊朝日 2012年7月20日号