フリーライターの和田靜香氏は3月から、原発抗議デモに参加している。「最初は10人だった!」と振り返るが、実際のデモの様子を、次のようにつづっている。

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3月29日(木)晴れ

 初めて、首相官邸前での原発再稼働抗議行動へ行く。それまで経産省前でやっていた抗議が首相官邸前に移った、その1回日だ。最初は木曜日だった。

 予定の6時少し前に着くと、チラホラ十数人しかいない。「ここでいいんでしょうか?」とOL風の女性と確かめ合い、「再稼働やめて!」と初めて大声で叫ぶ。駅に向かう官僚たちだろう、無表情で通り過ぎて行くのに唖然。隣にいたイケメン・サラリーマンに「あらっ」と胸ときめかせ、彼に向かって張り切って声を上げるが、あまりの寒さに途中で帰る。なんたるへタレ! 

 この夜は300人ほど集まった。

4月13日(金)晴れ

 病院から首相官邸前へ、ヨレヨレ向かう。その夜、閣僚が大飯原発再稼働を判断するだろうと言われていたから、何としても行きたいと思った。心は皆同じで、2700人も集まって驚いた。初回のほぼ10倍だ。

5月25日(金)小雨

 見知らぬ女性と傘を差し合う。あの場は不思議だ。東京一、人と人が一瞬で気兼ねなく触れ合える。

6月24日(日)晴れ

 仲間が増えるとやる気も増して、「そうだ、船橋行こう。電車でGO!野田退治デモ!!!...再稼働はダメなノダ!」にも参加した。

 三鷹から各駅ごと、総武線の先頭車両に黄色いグッズを身につけて乗り、車内が黄色に染まった。偶然乗り合わせて迷惑顔の人もいたが、中には「がんばってください」とエールを送ってくれる女性もいて「ありがとうございます」と皆でこたえ、そこからはオホホ、ワハハ、日帰りバス旅行のオバちゃん集団状態に!

 しかし女たちはすごい。私も手縫いの黄色いスカートで参加したが、草間彌生ばりの芸術ヒマワリ傘や、買い物袋をヒマワリで飾った帽子など、手芸パワーを爆発させていた。女たちがそんな風に綺麗、可愛いを競ってデコり始めたら、それは本気だ。ちょっとやそっとではビクともしない。そのへんを官邸の人は、よぉ~く理解したほうがいい。

※週刊朝日 2012年7月20日号