福島第一原発(フクイチ)事故に対して国会事故調査委員会は7月5日、最終報告書を公表した。

 報告書は、菅直人前首相の介入の有無が問題になった「海水注入問題」に関して、当時の生々しい証言を再録している。事故当時、官邸に詰めていた武黒一郎・元東電フェローとのやり取りについて、現場の吉田昌郎前所長が語った内容だ。

〈指示命令系統がムチャクチャなんですよ。結局、(官邸にいる武黒氏から)電話がかかってきて『おまえ、海水注入は』『やってますよ』と言うと、『えっ』『もう始まってますから』『おいおい、やってんのか』と。『止めろ」と言うので『何でですか』と。『おまえ、うるせえ。官邸が、もうグジグジ言ってんだよ』なんて言うから(私が)『何言ってんですか』と言って、あれ、切れちゃったよ、そこで〉

 まさに混乱の極みである。

 再三、事故現場の現状、東電本店の実情など、現場の人間でしかわからない「生の姿」を語ってきたフクイチ最高幹部は、この報告書を読んで、このような感想をもらす。

「こうして読むと、思わず苦笑するような中身です。が、生のやり取りを見てもらうといかに現場が大変だったか理解が深まる。原因究明にもつながる。

 事故当時の本店と現場のテレビ会議は映像データで残っています。しかし、データ提出を求めた国会事故調に対し、本店は『プライバシー保護』などを理由に本店内での視聴のみ許した。この映像データには菅前首相の姿もあり、後世に残る資料です。本店は早く公表すべきです」

※週刊朝日 2012年7月20日号