脱税疑惑や「国民年金なんか払うな」発言などを妻・満里子さん(61)に暴露された元国税庁長官・大武健一郎氏(66)のスキャンダルが、永田町や霞が関に衝撃を与えている。

 大武元長官は取材に対し、「当時、学生は任意加入で、国民年金の将来は大変難しいので学生時代はいらないよ、というのが僕の意見だった」と答えたが、財務官僚の一人は頭を抱え、こう嘆く。

「あの記事が出た後、ネットで『元国税庁長官が言うなら、年金を払うのやめよう』と書かれまくっている。消費増税法案が衆院を通過したのに、元国税庁長官が脱税疑惑などで妻に告発されるなんて前代未聞です」
 
 大武元長官のスキャンダルに見舞われた国税庁は、政府、与野党、関係省庁などへの対応に大わらわだったという。

 さらに、大武氏の"古巣"国税庁内では、東京国税局調査部に所属するエリート特別調査官のW氏が大武氏の取材に同席していたことが大問題になっている。朝日新聞記者として長年、国税庁を担当し、『徴税権力』(文藝春秋刊)などの著作があるジャーナリストの落合博実氏がこう指摘する。

「大武氏が当事者でもない現役国税局幹部を取材に同席させたのは極めて不穏当で、きな臭い話だ。新聞社・出版社も国税局の税務調査を受ける立場であり、取材記者や編集部にプレッシャーをかける狙いがあったとしか考えられない。現役職員が出てきたことで大武氏個人の問題にとどまらず国税組織全体の問題になった。国税庁長官経験者2人から私に電話があり、『驚愕の記事だ。現役職員を取材の場に引っ張り出したのも最悪』と嘆いていた」

※週刊朝日 2012年7月20日号