高3のときに映画の出演者募集に応募し、女優になるきっかけを作った秋吉久美子さん。当時、出演が決まったことで地元では名の知られた存在となったが、応募の理由は意外なものだった。秋吉さんが振り返ってこう話す。

*  *  *

 そのころ、ぼんやりと東京の大学の仏文科に行こうと思っていたんですが、将来どうしたいといった確固たる目的意識はなかったので、受験勉強にも身が入らなかった。嫌々、机に向かっているときにラジオの「バックインミュージック」で、募集の話を聞いて......。映画に出れば、この受験勉強のストレスから逃げられるかもって、そんな安易な気持ちでした。

 主役は文学座の高橋洋子さんに決まったんですが、助監督さんたちが、どうしてもあの子を連れていきたいと言ってくださった、と後で聞きました。自殺する文学少女の役でした。撮影は1カ月間のオールロケで、珍しい体験を楽しんで帰りました。

 ところが、天下分け目の夏休みをサボったせいで、翌年、見事に、受けた大学をすべて落ちてしまったんです。夏休み前は合格ラインをクリアしていたので、高をくくっていたんですよ。

 とても恥ずかしかった。地元でもマドンナ的な位置にいて、調子に乗っていたのに、"勉強もしないで、あんな勝手なことしていたら、こうなるんですよ"という、悪いお手本、カッコ悪い例になっちゃったわけですから。

※週刊朝日 2012年7月13日号