大荒れに荒れた6月27日の東京電力の株主総会。マスメディアは総じて原発に否定的だが、とくに朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の3紙はより明確に「反原発」を主張している、とジャーナリスト・田原総一朗氏は指摘する。田原氏は原発推進派を取材し、「不可思議なことを知った」という。
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現在、おそらく国民の70%ぐらいは脱原発派なのだろうが、これはマスメディアの報道に影響されている面はあるはずだ。
私は、原発を推進している経済産業省や文部科学省、さらには東電や関西電力の幹部たちも取材している。そして、不可思議なことを知った。彼らには、国民とコミュニケーションを取るという発想がないのだ。
福島原発の事故が起きるまで、日本では反原発運動はさほど盛んではなかった。それが事故以後、急速に増加した。これは無理からぬことだ。
だが、経産省や各電力会社の幹部たちは、それでも原発を普及させることが、国民のためにも電力供給のためにも必要だと確信している。
それならば、国民に直接訴えることが必要だ。私は彼らに「原発に反対している新聞社や通信社、あるいはテレビ局などの論説責任者たちを訪ね、2日でも3日でもあるいは1カ月、2カ月でもとことん話し合い、論じ合ったことがあるか」と問うた。しかし一度もないという。
なんと彼らは、広告こそがコミュニケーションの手段だと考えているのだ。討論などは賛成派が負けるかもしれないので危なくてできない、というわけだ。
電力会社の発想も同じだ。新聞やテレビなどに莫大な広告費を支払ってきた。それこそが国民とのコミュニケーションの方法だと思い込んでいたのである。
だが広告など、さほど注目して見ることはないし、内容をうのみにもしない。そのことが全然わかっていない。
※週刊朝日 2012年7月13日号