元国税庁長官・大武健一郎氏(65)は「税と年金のスペシャリスト」(財務省関係者)と呼ばれてきた。それは、1976年から2年間、厚生省(当時)年金局年金課で年金を、大蔵省では主税局一筋で竹下内閣の消費税(3%)施行などから20年近く、税制改革に携わった他に例のない人物だからだ。その大武氏が「年金は払うな」と発言していたことが、妻・満里子さん(61)の告発でわかった。

 満里子さんによると、長女が20歳になり、区役所から国民年金を納付するよう連絡がきたとき、満里子さんが相談すると、大武氏は繰り返し、「国民年金なんか払うな。将来は破綻してもらえないから損をする。俺は厚生省で年金のスペシャリストだったんだぞ」と言い放ったという。

 満里子さんの証言によると、家族に対して金銭面ではかなりシビアだったようだ。

結婚以来30年以上、夫は私に預金通帳、給料明細を一切見せず、収入の一部を現金で手渡してきました。子供たちが小学生のころは18万円程度しかもらえず、エアコンも買えないほど生活は苦しく、同じ官舎に住む同世代のノンキャリアの部下のほうが生活水準が高かった。私が文句を言うと、『あの人は悪いことをしている』とはぐらかしていました。そして都合が悪くなると、『俺も悪いことをするぞ』と威嚇し、暴力をふるうようになりました」

※週刊朝日 2012年7月13日号