福島第一原発事故後、約4万5千人が体内への被ばく量を調べる検査を受けたが、その約3分の2を調べたのが日本チェルノブイリ連帯基金理事長の鎌田實(かまた・みのる)医師と、南相馬市立総合病院に非常勤で勤める坪倉正治(つぼくら・まさはる)医師だ。南相馬市立総合病院で昨年の10月に実施した調査では、セシウム137が検出された人は大人全体の約7割に達していたという。被ばく検査を重ねることで放射能の「見える化」が進み、数値が上がる原因と対処法が徐々にわかってきたと2人は話す。

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鎌田:やはり、放射性物質がたくさん飛散したと言われる地域の人たちは昨年末の段階ではわりと高い数値が出ていました。しかし、問診をして1カ月後や2カ月後に測ると確実に数値は落ちていきます。

坪倉:南相馬の場合、検査で特に数値が高く出た人や家族に詳しく話を聞くと、家庭菜園で取った野菜を食べているとか、自宅近くの山で採ったキノコを食べたなど、それなりの理由がわかってきました。ミルクや野菜などで流通しているものは国や県の規制がありましたからリスクは非常に低いですけど、高い数値が出る人は自家栽培のものを食べていた人が多かったですね。

鎌田:(福島県平田村の)ひらた中央病院では、近くの人が獲ったイノシシの肉を食べた家族の数値が急に上がったりしました。イノシシはどのような行動を取っていたとか、どのようなものを食べていたとか調べようもありませんからね。

 ガラスバッジで外部被ばく量を調べ始めた当初は、原発から20キロ圏内に置いていた自家用車を持ち帰って、除染せずに毎日乗車していた妊婦さんがいて、高い数値が出ていましたが、除染したり食事に気をつけるようにしたら、2カ月で数値が減少したこともありました。

坪倉:明らかに時間の経過とともに、セシウムが検出される人の割合が下がってきています。南相馬市立総合病院での昨年9、10月に小児を対象にした検査では、約半数が検出限界を超えていましたが、今年3月の検査ではセシウム検出率は1%未満にまでなりました。大人も同様で今年1月には約9割が検出限界以下になっています。セシウムが排泄されていくんです。

鎌田:それもあるし、日本人が食べ物に対して慎重になって、線量の高い食べ物を上手に排除しているのも大きいでしょうね。

坪倉:先日も驚いたのですが、南相馬市民の体内のセシウム量は1960年ごろに行われた大気中核実験直後の日本人成人男子の平均値よりも低い方がほとんどなんです。

※週刊朝日 2012年7月6日号