事実上の「大連立」による「談合会議」で幕を閉じた、税と社会保障の一体改革関連法案をめぐる民主・自民・公明3党の修正協議。御厨貴東京大学客員教授は、この結末に「国会無用政治の始まり」を危惧する。

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 現在、国会は本質的な議論が何も行われず、聞くに堪えない罵言雑言が飛び交うだけの場となっています。消費増税の議論は国会ではなく、民自公の3党協議の場で行われているからです。つまり、日本の将来を左右する重要な決定は国会の外で話し合われ、国会は場外乱闘のような状態で、内と外がひっくり返ってしまっているのです。

 国民の政治への信頼感を取り戻すには、増税法案をきちんと通さなければなりません。 この法案をいま通さなければならない必要性や意義をしっかり説明し、決定のプロセスを見せる。今回の消費税政局には、それがまったく欠けています。

 さらに問題なのは、現状が事実上の"大連立"状態だということです。3党協議で重要法案を固めるということは、大連立どころか、大政翼賛的な巨大与党が誕生したことを意味します。

 3党間に根本的な対立は存在せず、あらゆる法案が国会ではろくな議論もされずにボンボン成立していく。これを「決められない政治からの脱却だ」という人もいるでしょう。しかし、党首会談=ボス同士の交渉ですべてが決まるなら、国会の存在意義はない。民主主義を完全に逸脱しています。そんな日本政治に未来があるとは思えません。メディアも政局の一挙一動に騒ぐだけ。その先に何があるのか、このまま大連立に突き進んだらどうなるのか、国民も含めて、きちんと考えるべきです。
 
※週刊朝日 2012年6月29日号