これまで野田内閣に対して辛口な意見を述べていたジャーナリスト・田原総一朗氏。「実は、野田首相が国民の期待に応えようとしているということがわかった」というのだが……。
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2009年の総選挙で、民主党は大勝して政権を奪取した。だが、いまや「民主党は期待外れだった」「何もできない素人集団」「完全に失望した」といった意見が圧倒的に多い。
しかし、総選挙のとき、国民の多くが自民党に愛想を尽かしたのは、何よりも、自民党が「密室談合」の政治ばかりを続けてきたことだった。国民の目につかない、内々の政治を続けてきたことに、国民は激怒した。
もちろん、91年にバブルがはじけて以降の深刻な不況という現実もあったが、誰も民主党ならば景気がよくなると期待していたわけではなかったはずだ。密室談合ではない、徹底的に開かれた、何もかも国民に開示した政治、特に政策決定のプロセスの開示を、国民は民主党に求めていたのだ。
それに応えるためなのだろう。野田首相はすべての交渉を、開かれたオン・ザ・テーブルで行おうとしている。アンダーテーブルでの交渉は国民の期待に反し、アンフェアだと考えているのではないか。そのためにどれほど政策決定の速度が落ちようとも、である。
野田首相は徹底的にオン・ザ・テーブルで開かれた政治を行わなければならないと決意していて、だからこそアンダーテーブルの作業が大嫌いな岡田克也副総理や藤村修官房長官などを重用しているのだろう。
オン・ザ・テーブルで議論していれば、期限に間に合わなくとも仕方ないと考えているのではないか。
※週刊朝日 2012年6月22日号