腎がんには、開腹手術よりからだの負担が少ない治療法として、皮膚に特殊な針を刺して、内臓のがん細胞を直接たたく療法がある。3センチ以下の腫瘍にはとくに有効な治療法だ。

 青柳より子さん(仮名・60歳)は、2011年に左腎臓のがんが発見された。青柳さんは、膵臓がんの手術を過去にした際、傷口が感染し、2カ月間の入院治療をさせられた経験があった。そのことから、腎がん発見時にも開腹する手術はためらわれた。

 そこで、かかりつけ医に紹介された治療法が東京慈恵会医科大学柏病院での凍結治療だった。

 凍結治療は腹部に直径1.47ミリのプロープ(ニードルとも呼ばれる針状の挿入器具)を刺し、約20秒間のマイナス165度からプラス54度まで急激な温度変化をがん細胞に与え破壊する治療法だ。破壊されたがん細胞は徐々に周りの細胞に吸収されていくため、取り除く必要がない。

 治療について、青柳さんは次のように言う。

「『もう終わり?』と手術が終わったときに思いました。これまでがんの手術は大変な思いで受けていたので、こんなに簡単に終わって拍子抜けしました」

 凍結治療のように外科的な治療をともなわずにがん細胞を直接たたく治療を、経皮的局所治療と呼ぶ。この中には、ラジオ波焼灼術(以下、ラジオ波)、経皮的エタノール注入療法、マイクロ波凝固治療、温熱療法などがある。腎がんに対する凍結治療は11年7月に保険適用されたばかりだ。凍結治療は、ラジオ波やマイクロ波といった熱で焼く治療と比べ、治療中の痛みがほとんどない。青柳さんのように、いつの間にか終わってしまったと思うほど、患者負担の少ない治療法だといえる。

※週刊朝日 2012年6月22日号