原発事故はいまだ収束せず、検証も対策も中途半端なままだ。そんな中、野田政権は原発再稼働に向けて動いている。さらに国の原子力政策の根幹を揺るがしかねない大問題が今、白日の下にさらされつつある。

 毎日新聞は6月2日付朝刊1面で、内閣府の原子力委員会で原発推進派だけを集めた「秘密会議」が今年2月にもたれ、国の原子力政策大網づくりを担う「新大綱策定会議」に使われる議案の原案が事前に配られていた、と報じた。

 原子力委員会は国の原子力政策や予算を決める、原子カムラでもっとも重要な機関。5年をめどに見直される「大網」は、原子力分野の「憲法」とも言うべきものだ。

 毎日新聞は5月に「秘密会議」の存在をスクープ。「勉強会」と称した会議は過去に20回以上開かれ、うち4回は近藤駿介委員長自ら出ていたことも後に明らかになったが、事務局側は「会合は小委員会の資料準備のための作業連絡の場だった」などと釈明し、策定会議本体との関係は認めてこなかった。

「原子力政策の基本である大綱を、原発推進派である利害関係者たち自身で書いていた、あるいは事前にチェックしていたとすれば大問題です。壮大なヤラセ、国家的な詐欺だ」

 そう憤るのは、策定会議のメンバーでもある慶応大学の金子勝教授だ。

 原子力委員会をめぐっては、ほかにも3人の専門委員が400万から800万円強の寄付を原発関連の事業者などから受けていたことで、利益相反が疑われている。さらに事務局スタッフのうち、8人が東電や関電、東芝や三菱重工などからの出向組で、その給与や社会保障費も出身企業が負担していたことまで明らかになっている。

「東電は、国策に従って原発を進めてきたのだから、事故の責任から免れられるかのような言いぶりをしますが、自ら国策作りに関与していたとすれば、言い逃れはできない。原子力体制は根元から腐っているというはかなく、徹底的な検証が必要です」(金子氏)

※週刊朝日 2012年6月15日号