借金で福祉を維持する「借金民主主義」は限界を迎え、今月中旬、その是非を問う再選挙が行われるギリシャ。緊迫状態かと思いきや、ギリシャ人はどこまでも享楽的だった。

 中山茂大氏(人力社)がレポートする。

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 ギリシャ北部テッサロニキ近郊のキミナ村で、ムール貝の養殖で生計を立てる漁師テオドロス・ツァリディスさん(45)。出稼ぎのアルバニア人を3人雇い、愛車は北欧のサーブ。二十歳過ぎの彼女とシーフードレストランで食事を楽しむ、なかなかの羽ぶりの良さだ。

「食事とワインと音楽。これがギリシャの3大悦楽なんだ」

 レッチーナ(ギリシャのテーブルワイン)片手に、彼女の肩に手を回す。夜ごとの宴会が未明まで続くのは毎度のことだが、一応、彼も漁師さん。起床時間は午前5時だ。それでも連夜の宴に、寝る間を惜しんで出かける。

「人生は楽しまなきゃ損だ。寝ちまったら、そのぶん人生が減っちゃうじゃないか」

 多くのギリシャ人は「仕事は必要悪」と割り切っている。その暮らしは、毎日が「半ドン」だ。たしかに朝は早起きで、午前中はよく働く。そして昼食のあとは長い長いシエスタ。夕方5時ごろになって、ようやく仕事を再開するが、皆どことなく上の空だ。残務処理をチョイチョイと済ませて、きっさと店じまい。午後8時には帰宅してシャワーを浴び、お楽しみの夜の街に繰り出す。

 そんな彼らに、最近の財政危機について尋ねると、

「ああ。あんなもんは政治家と役人が悪いんだ。脱税とか汚職とか、悪いことしてるヤツがいっぱいいるからね。緊縮策は我々に、その責任を押しつけてるだけだ。絶対反対だよ......ユーロ離脱? そりゃ困るなあ」

 楽観的で享楽的。そしてちょっと無責任。しかし、そんな彼らのライフスタイルが少々うらやましく思えるのは、筆者だけではないだろう。そして「緊縮策」を「消費税」に置き換えると、なんだか耳が痛いような気も......。

※週刊朝日 2012年6月15日号