神経の通路である脊柱管などが狭くなることで、下肢の痛みやしびれ、休み休みでないと歩けない(間欠破行=かんけつはこう)などの症状が起こる腰部脊柱狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、高齢化により増加傾向にある。

 神奈川県在住の会社役員、川井俊彦さん(仮名・68歳)は、還暦を迎えたころから、足に痛みやビリビリとしたしびれを感じるようになった。初めは年のせいだろうと整体やマッサージなどに通って様子を見ていたが、会社との往復で使う駅の階段を下りるのがつらくなり、平坦な道を歩いてもつまずくようになった。近所の整形外科クリニックでMRl(磁気共鳴断層撮影)などの検査を受け、腰部脊柱管狭窄症と診断された。

 同院で、骨盤にベルトをかけて引っ張る「牽引」や鎮痛薬などによる治療を続けたが、症状は悪化する一方で、川井さんは、別の医師の紹介で、関東労災病院を訪ねた。整形外科部長の夏山元伸医師のもとで受けたのが、低侵襲(ていしんしゅう)手術の一つ「内視鏡下椎弓切除術(MEL)」だった。

 川井さんは手術の翌日には歩き始め、1週間後に退院。その4日後には仕事に復帰。さらに4日後にはコルセットを装着しながら1万歩を歩くまでに回復した。趣味のゴルフの練習を再開したのは1カ月後、コースに出たのは2カ月後だった。

「手術前はあれほど歩くのが苦痛だったのに、退院後すぐに何十メートル、何百メートル歩けるようになった。生きがいのゴルフを続けることができ、とてもうれしい」(川井さん)

 腰部脊柱管狭窄症の手術では、狭窄(狭くなること)の原因となる骨や靭帯を削って、脊柱管を通る神経の圧迫をとる「除圧術」が実施されている。以前は背中を大きく切開する方法がとられていたが、十数年ほど前からは、内視鏡や顕微鏡を使った、からだに負担の少ない低侵襲手術が普及している。

※週刊朝日 2012年6月15日号